H29年9月24日(日)12:00~9月25日(月)13:00

皆川 黒澤 松村の3名が参加し、以下に当日配布されたレジュメを基に講演・分科会の内容をレポート致します。

1 特別講演「iPS細胞による網膜再生とロービジョンケア」

国立研究開発法人 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト研究員 仲泊聡 先生

最近まで障害されると再生しないと思われていた網膜をiPS細胞を使って再生する試みがはじまっている。現在行っている網膜移植治療は、iPS細胞から作った網膜色素上皮という細胞を加齢黄斑変性という疾患の患者の目に手術的に植えるものである。2014年9月12日に世界で初めてこの治療を受けた患者の経過は順調で現在更に改良を施して別の患者への治療が行われている。 この様な治療が行われるようになると、世の中から視覚障害は無くなる訳ではない。まったく見えなかった人がわずかに見える様になる事は十分可能性があるが、普通の視力に戻ることは実現には未だ難しい。この不十分な見え方により生活にまだ支障を残している状態をロービジョンと呼ぶ。 しかし、その違いは大きく、また得られたロービジョンを如何に生活の効率改善に結びつけるかは、術後の患者の生活の質に大きく関わる。眼球に修正を加えるだけでなく、情報提供と訓練によっても視覚障害者の社会参加を促す事を目指している。 ロービジョンケアには、ニーズ聴取、視機能評価、書類作成、社会資源の情報提供、エイドの紹介、環境整備の6つパートがあり、既存の支援施設との連携を軸に情報提供を行い、周囲のひとの理解促進、空間整備、社会啓発、環境整備、特に視覚障害者の就労支援に力を入れている。 就労は視覚障害によって失うことの多い、所得、所属、生きがいの全てを同時に取り戻す可能性を秘めている。此れを実現するには、見えない、見えにくいことで苦手となった、移動、読字、表情把握、を何らかの方法でカバーする必要がある。これまで、そのような状況に置かれた視覚障害者を支えてぃた就労支援の代表が東洋療法である、あん摩・マッサージ、鍼灸である。 2060年には国民の40%が高齢者になると言われている。しかしICT・AIが当たり前の時代になり、「高齢者・障害者でも生産者であれ」という社会的要請はどんどん大きくなると予想される。新しい技術、新しい考え方で、これからの時代を切り開いていく必要があり、その中で東洋療法は古い捨て去るべき方法ではなく、大切な選択肢の一つである。そして視覚障害者の就労フィールドとして、より効果的に実現する方法についてもされに検討していく。

2 スポーツ事業委員会「2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて」

2年後に迫った200020東京オリンピック・パラリンピックに向けて、委員会として2020東京オリンピック・パラリンピック組織委員会と協議を重ねている。その進捗報告と全国の市町村で着々と決定しているキャンプ地でのトレーナー活動の準備方法と、都道府県での委員会立上依頼について。

3 AcuPOPJ(国民のための鍼灸医療推進機構)活動報告

国民のための鍼灸医療推進機構(略称AcuPOPJ)の組織体制、実施事業が紹介された。 本機構設立の目的・組織体制、普及啓発作業部会の事業内容(主に鍼灸net)について。鍼灸グランドデザイン検討委員会及び研修部会についての紹介。「鍼灸師卒後臨床研修」について。

4 保健推進委員会(1)

「いわゆる『不正請求対策』における対応について、受領委任制度導入後の取り扱いの変化について」 国に対して要望してきた「一部負担金で掛かれる制度」については、受領委任制度導入の方向性がしめされる事で一定の成果を得た。 しかしながら、その制度概要は本来要望していた内容とかけ離れ、更なる受領抑制を招く危険性を孕んだものとなってしまった。特に制度導入の前提として課題に挙げられた、いわゆる「不正対策案」は真摯にあはき術を営む施術者の大きな負担となる可能性が高い。 「不正請求」を防ぎ、真面目に施術に取り組む施術者が「受領抑制」の憂き目に会うことのないように、今後も最大限努力していく一方、社会保障の抑制という大きな流れの中で、施術者自身が公的財源を扱うに値すると評価される姿勢を持つこと重要である。 「不正対策」としてどのような事が指摘され、どのように対応していくべきか。また「あはき受領委任制度」は、どのような制度となり、施術者はどのような影響を受けるのかを予想し、大きな制度変更に備える。

5 災害対策委員会「熊本地震祭が医療派遣の報告」

H28年に発災した熊本地震に災害医療として実際に派遣された担当者からの発表。発災ごすぐに現地に入りして仮設住宅で活動した時の報告。

6 保険推進員会(2)「あはき療養費の中長期展望を考える」

社会保障費全体の抑制が行われていく中で、あはき療養費についても大きな選択を迫られている。業界内部で、どのような療養費制度が患者にとって有益なのか議論し取り組むべき課題を共有する。

7 学術委員会「臨床発表」

世界における鍼灸マッサージは、治療・予防効果が評価され、エビデンスが確立されつつある。世界鍼灸学会も昨年は筑波で盛況のうちに開催された。鍼灸マッサージ医療は、全人的で、オーダーメイドの治療であり費用対効果の高い医療システムである。しかし国内では医療・介護保険等社会保障制度の抑制や国民の鍼灸受療率が4%程度と低迷しており、本来の鍼灸マッサージの素晴らしさ2を伝えきれていない。業団としては保険制度推進と同様に、臨床の実際や各地域での取り組みを発表し施術の質の向上を図る。

8 無資格対策委員会「どうなる?あはきの広告規制―その意義と意味について」

平成29年月14日公布の医政局発0614第6号「医療法等の一部を改正する法律」において「医療に関する広告規制の見直しに関する事項」が盛り込まれた。これは安全で適切な医療提供の確保を推進する事を趣旨とした改正である。 業界内部ではあはきは医業であるか、医業類似行為であるかとの議論は活発に行われており、明確な答えには「あはき法」の改正が必要であり、その前段階として「広告規制の見直し」は必須事項である。厚労省から佐生啓吾医事専門官を招き今後の「あはき広告規制」の方向性についてシンポジウム形式で議論した。

9 地域健康作り委員会(介護推進委員会)

「総合事業の実際―事業に関わるためには」 地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みが、全国的に進んでいる。自治体が最初に取り組むべき課題である「総合事業」は鍼灸マッサージ師が専門職として関わることのできる事業である。いくつかの地域での鍼灸マッサージ師が総合事業に関わるためにどのような事をしているのか?実例紹介とシンポジウム。

10 視覚障害委員会「視覚障害あはき師の現状と未来」

会員の大半は自営業者である。視覚に障害を持っていても健常者と可能な限り同じ様な仕事ができるように色々な角度から検討している。かつては、話術と蝕知能力に秀でた視覚障害鍼灸マッサージ師は、それだけで相当な営業成績を上げる事ができた。ところが現在は、多様化する価値観の中で技術と会話能力だけでは通用しなくなってきた。鍼灸マッサージ師が個人としてどんな努力をしなければならないのか。業団体としては何を提供すれば、業界のレベルアップにつながるのか。日本理療科教員連盟 栗原会長からの提言。