松塾・杉塾 ~学生・若手鍼灸師のための学術塾~
わたしたちは伝統文化の一環である鍼灸のわざと思想を継承する責任を担っています。
患者さんの期待に応え、世界鍼灸に貢献するために、都師会は生涯教育の機会を提供したいと思います。
鍼灸術の根幹の哲学が盛り込まれた『黄帝内経』の思想を学ぶ会を、当会の学術担当理事、松田が担当し、日本伝統鍼灸のわざを基礎から手ほどきする会を、当会の太田区支部長、杉山が担当します。
それぞれの姓を採り、松塾、杉塾と名付けました。
伝統医療を学ぶための必須の入門編として、特に学生や若手鍼灸師の方にお勧めいたします。
松塾 ~「鍼灸の思想」を学ぶ会~
※日時・場所:不定期開催になりました。
詳細が決まり次第ホームページ、Facebook でお知らせ致します。
松塾の配布資料を公開しています。
杉塾 ~伝統鍼灸基礎講座~(令和3年度で閉講)
杉山勲先生のご逝去に伴い令和 3 年度をもちまして閉講致しました。
ただし、杉塾での講義内容に対してご質問に極力塾生が対応する予定です。
その場合は当会事務局まで、メールにてお問合せ下さいませ。
※杉塾での講義内容を中心にまとめた遺著が出版されました。 ご参考にして下さい。
講師からのメッセージ
松塾: 松田博公
1945年神戸市出身。元共同通信社編集委員。元東洋鍼灸専門学校副校長。明治国際医療大学大学院修士課程(通信制、伝統鍼灸学専攻)修了。
著書に『鍼灸の挑戦』(岩波新書、第19回間中賞受賞)、『日本鍼灸へのまなざし』(ヒューマンワールド、日本伝統鍼灸学会創立40周年記念賞受賞)、対談集『日本鍼灸を求めて Ⅰ、Ⅱ』(緑書房)など。
しかし、わが国では、『黄帝内経』はほとんど臨床技術書としてのみ理解され、技術的な部分がつまみ食いされてきました。それは、『黄帝内経』の本当の読み方ではありません。『黄帝内経』に描かれた宇宙観、自然観、生命観こそ、私たちの臨床を豊かにし、伝統医療の臨床家としての誇りと生き方の根拠になってくれるものです。そして、このように位置づけた『黄帝内経』の思想との比較を通して、日本文化が磨き上げた日本鍼灸の固有性を知ることができるのです。
本研修会は、平成24年8月に開講し、「『黄帝内経』に黄帝の名前が付いているのはなぜか」「五蔵六府は解剖学的事実ではない」「『黄帝内経』に影響を与えた謎の黄老思想とは何か」「『黄帝内経』誤解の種は唐の王冰によってまかれた」など、毎回、新たな見解を示してきました。その作業は、今後も続きます。
杉塾: 杉山勲
1945年茨城県生れ。1967年はり灸師免許取得。 経絡治療の東洋はり医学会での修業を経て、現在は自らのわざを打ち出す。 鍼灸研究団体「大成会」主宰。
著書は、『鍼術速成講座』『鍼術上達講座』『鍼術完成講座』の三部作(緑書房)、『鍼灸院の患者が増える即効・陽経治療』『鍼灸いろは経・総論』『鍼灸いろは経・各論』(いずれも源草社)など多数。2022 年 3 月没。
日本鍼灸は、飛鳥時代から江戸時代まで何波にもわたって受け入れた中国鍼灸を、日本固有の技術志向と自然主義的な感覚によって磨きあげ、作り出されたものです。現在、そのわざは、経絡の重視、脈診の活用、ツボや体表の変化を察知する触診、刺さない接触鍼や浅鍼など皮膚に優しい技術など、現代中医学とは異なる特色を持った鍼灸術としてわが国に定着しています。
明治政府の東洋医学排除政策のあおりを受け、江戸期鍼灸の伝統は断絶しましたが、私たちは、現在の日本鍼灸には、昭和初期に伝統の復興を目指して立ち上がった若き鍼灸家たちの魂が宿っていると考え、それを伝統鍼灸と呼んでいます。
中医学や現代的鍼灸には優れた価値がありますが、日本の鍼灸界が活性化し、諸外国の鍼灸師の「肌に優しいニッポンの鍼」を学ぶ意欲に応えるためには、鍼灸界の核に日本伝統鍼灸が位置付いていることが必要です。しかし、現在の専門学校で、伝統鍼灸を習得する機会は充分ではありません。
私たちは、専門学校における鍼灸教育を補い、鍼灸入門期の皆さんに、伝統鍼灸の基礎的な手ほどきをしたいと考え、講座を企画しました。
講義では、急性疾患の患者さんにすぐ効果を発揮できる陽経中心の治療からはじめ、慢性疾患に対応する陰経中心の治療に及びます。診断には、脈診と体表観察を用い、『黄帝内経』の文章にも親しみます。